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より遠くへ。より速く。-造船技術に注目あれ- [造船業]

こんにちは。キャプです。

毎年ながら、オフシーズンのブログ更新は、試合や合宿といった話題が少なく、
『ボート競技』から逸脱した、いわゆる「脱線ネタ」が多くなってしまいがちです。
ということで、今回の更新では、少し軌道修正。
ボート競技に触れながら、やはり『脱線ネタ』のお話を(笑)

オフシーズンのボート競技におけるトレーニングのテーマは、
いかに漕力をつけ、筋力をつけ、来シーズンで艇のスピードをUPさせるかが課題となります。
そのために、長い距離のUT(有酸素トレーニング)や、ウェイトトレーニング、サーキット・・・etc
など各選手、各団体のトレーニング内容に関する取り組みは多種多様です。
しかし、その根底にあるのは「1秒でも早くボートを進ませたい!!」という強い気持ちでしょう。

自身の鍛練もさることながら、やはりボートの性能にも注目したいところ。
カーボンやプリプレグを素材として使ったボートは当たり前で、船型やリガーの形状、
など競技用ボートを作る造船所でも様々な研究が進んでいるようです。

そんな中、やはりもっとも注目を集めているのが水との接点、
つまり粘性抵抗を減らすための「素材」や「塗料」です。
先のオリンピックの水泳競技で、水着の性能が記録を大きく左右したように、
素材の研究が、10年後、20年後のボート業界に革新的な変化をもたらす可能性があります。

エンパ.jpg
これは我々造船会社が造る商船も同じです。
船体の錆対策や環境汚染を防ぐ塗料はすでに研究、実用化されていますが、
造船業界で最も注目されているのは、摩擦抵抗を減少させる特殊塗料の開発です。
例えば、水をはじくことで航行中の抵抗を減らす塗料は、
ヨットの「アメリカズカップ」でも使用され注目を集めました。
逆に、親水性のある塗料によって、船体表面の水流をスムーズにするというものもあります。

図1.jpg
また、航行中の船首付近から水中にマイクロバブルを送出することにより、
船体と水との間に乱流の発達を少なくして抵抗を減らすという手法(空気潤滑法)
も実用化に向けて研究されています。


図2.jpg

図3.jpg
一方、自動車のスポイラーやF1マシンのディフューザーなどのような、
水流をコントロールする船体不可物の応用も有望であるようです。

造船(商船)とボート競技(レーシングボート)は製造における技術面で、
接点があることも多く、当社に来社されるお客様や、業者さんのお話も
ボート競技と重ね合わせると、なかなか興味深いものばかりです。

10年後には思いもよらないレーシングボートが開発され、
世界中で使われているかもしれませんね。

そして、その技術が10年後も「ものづくり大国、日本」
お家芸であることを願ってやみません。
自身の鍛練と、最新の造船技術が、
よりボート競技を面白くしてくれるのです。

by キャプ


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シラネアオイ

こんにちは!釣りのためプレジャーボートに乗船していますが、船底の塗装や貝や海草の除去等を行うと、船速や揺れがかなり改善されます。先日はスクリュウの摩耗の盛り上げや研磨を行ったようです!格段に改善したのが良くわかりました。技術の進歩は目まぐるしいものを感じます!!
by シラネアオイ (2011-12-05 12:35) 

ナツパパ

船舶の設計は歴史があるので、もう窮め尽くされていたのかな、
と思っていましたが大違いでしたね。
これからもどんどん進む技術、素晴らしいことだと思います。
by ナツパパ (2011-12-05 16:13) 

苦楽賢人

どんな荒天でも、揺れない船って欲しいです。
大きなフェリーなら安心かと、伊良湖フェリーに家族で乗った時、大きなどんよりとした揺れに、子どもも妻も酔ってしまって・・・後の観光は散々でした。

技術の進歩は、やはり、人と環境に優しいというものが大事ではないでしょうか。

頑張ってください。
by 苦楽賢人 (2011-12-05 18:20) 

mimimomo

こんばんは^^
世界に冠たる日本の技術力~
素晴らしい船やボートが出来ることを願ってやみません。
だってそれ自体が日本の経済力を活性化させることになりますものね~w

by mimimomo (2011-12-05 18:36) 

Ladle

すごく興味深い内容ですね。
確かに車の世界でもレーシングスポーツと自動車産業
の関係がそうですし、船の世界でも形状や素材の研究
が今後も進んでいくのしょう。
道具とそれを扱う人の技でより早くより早くですね。
by Ladle (2011-12-05 19:12) 

アリスとテレス

空気抵抗や水の抵抗を小さくする技術は、この先もまだまだ発展していきますね。
こっち方面の脱線は大歓迎です^^
by アリスとテレス (2011-12-05 19:15) 

くまら

戦前頃からの日本の船舶技術はすごいと
勝手に思っております
by くまら (2011-12-05 19:33) 

駅員3

これからの技術革新が楽しみですね[るんるん]
by 駅員3 (2011-12-05 20:13) 

naokun

こんばんは
いつだったかテレビ番組で今治造船が出てきて
すごいな、と思いました

by naokun (2011-12-05 20:28) 

hatumi30331

ものづくりに誇りを持って・・・頑張って下さい!^^
by hatumi30331 (2011-12-05 21:46) 

U3

勉強になりました。
by U3 (2011-12-05 22:19) 

pandan

いろいろ進化するんですね。
日本の技術は凄いですよね。
by pandan (2011-12-06 06:09) 

kumakichi

マイクロバブルで水中の酸素濃度をあげて海洋植物の養育に
使われてるとは聞いてましたが、船の走行に使うとはすごい発想。
勉強になりました。環境にもやさしい技術開発に期待してます。^^
by kumakichi (2011-12-06 09:47) 

吉之輔

お早うさんです、日本の技術力の凄さで、素晴らしい
船やボートを作って下さいね、いい勉強になりました。
お尋ね頂きナイス有難う、今後とも宜しく願います。
by 吉之輔 (2011-12-06 10:48) 

shige

さすがものづくりの国、日本ですね!

これからもずっとそんな日本であってほしい^^
by shige (2011-12-06 20:09) 

PopLife

競技用のボートであれば接点を減らす術をとるのでしょうが?
タンカーともなればそうはいきません。でも発想の転換でしょう。
転がり抵抗?をプラスへと変わると判断した良い結果なのでしょう。
そこでお尋ねしますが軽量化も細部に渡り行われいるのでしょうか?
良しなに。ではまた。ありがとうございました。
by PopLife (2011-12-07 09:56) 

pandan

おはようございます。
今日はお天気が悪くなりそうですね。
by pandan (2011-12-08 06:42) 

今造ROWINGTEAM

ブログをご覧のみなさま、いつも沢山のコメント
まことにありがとうございます。
さて、PopLifeさんからのご質問の件、
「お尋ねしますが軽量化も細部に渡り行われいるのでしょうか?」
についてですが、下記ご回答いたします。

競技用ボートについては、軽くて丈夫なカーボン素材を使ったり、
船体を短くしたり(選手の体格や体重にもよりますが・・・)
船型をかえたりと軽量化は図っておりますが、実際のレースでは
艇の設定重量というものが参加資格の一つにあり、
レース終了後の「艇計量」で基準より軽い船は「失格」となります。
※例えば、シングルスカル(一人乗り)だと13.0kgだとか。ダブルスカルは27.0kgとか、各競技種目で規定の艇重量があります。

したがって、軽すぎる船は「デットウェイト」という重りを載せて、
規定重量に設定してからレースに臨むのです。
ちなみにcoxと言われる舵手も規定体重があり、軽すぎると、これまたデットウェイトを持たされます。
※水を飲んで一時的に体重を増加させるなんて人もたまにはいますが(笑)
艇の性能差をできるだけ少なくして、公平に「スポーツマンシップ」にのっとって競技をする。そういった趣旨からきたものであるといえるでしょう。
簡単にですが、ご説明まで。

by今治造船ボート部




by 今造ROWINGTEAM (2011-12-09 16:16) 

Jupiter

ホバークラフトでの大量輸送は実現が難しいのですかね。
by Jupiter (2011-12-11 17:56) 

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